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テーマ「連載小説」の記事を新着順に表示しています。(7ページ目)

吹上随想#13 山繭
五齢最大時七〜八cm、十七〜二十gに成長し飼料葉の枝下に移動して、天蚕は動かなくなった。さと子の染めた矢絣に袖を通して帯をしめた。修造は早くに圭とうの場を出て行った。一晩中絶えることのなかった房事のことに、さと子のŭ ... » more
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吹上随想#12  山繭
さと子には染色家としての顔がある。「藍は藍より出でて藍より青し」さと子はこの言葉に魅せられて、染色家になり藍壷に藍の命を感じて来た。始めに手掛けたのは、矢絣であった。麻で十四mの糸を締め上げ、藍壷ににじり入れ「付ける」のだが、藍 ... » more
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吹上随想#11  山繭
見るも無惨なのは、修造だった。自分の醜さが顔だけではなく、男の醜さに気づかされたことだった。「俺は、薄汚れた醜い最低の男となったのだ・・・・。」修造は金槌をドタリと床に落として、耳底に残るたもとの笑い声から逃れるように養蚕部屋を ... » more
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吹上随想#10  山繭
産卵籠に雌雄の天蚕を入れるが、相性があるとみえて必ずしもつがいになるわけではない。雌は籠目から腹を突き出して卵を産み付け、時に外部から雄が飛び込むことがある。雌は外部からの雄を受け入れ、籠の中の雄には興味をしめさない。たもと ... » more
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吹上随想#9  山繭
たもとは、歳のわりに幼さが消えない。消えないと云うより相手によって、感応する。村人に対しては毅然と対応している。「おい修造よ、近頃天蚕後家の家に通いずめで随分ご執心らしいな」畦に背を向け村人の通り過ぎるをやり過ごす修造であっ ... » more
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吹上随想#8  山繭
飼料葉の若葉も消石灰の溶液で洗った。たもとが修造にまとわり着くようになった。「どこに行くの修造さん」「山だ・・・・」「たもとも行きます」「えっ、狩りに山に入る。来るな。」「たもとも、行きます」「えっ・・・、山に女 ... » more
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吹上随想#7  山繭
千頭の天蚕は全滅だった。すべての箱を焼き、養蚕部屋を消毒しなければならなかった。丸まって干からびて居たのを見ると、ヤドリバエの類が幼虫に卵を産み付けたのだろうか、寄生に依るものだろうか昭和二十三年当時、細菌も疑われたが死因を糸状菌の ... » more
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吹上随想#6  山繭
さと子は思う、命と命は感応妙ではないか。天蚕の命とさと子の命は共に感応しあい、修造の命とさと子の命もまた感応し合っているのだと。人と人とは、感応し合わない場合が多い。この感応を「愛」と呼べばよべるのだろう。花の命とさと子の命が感 ... » more
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吹上随想#5  山繭 
風呂を焚きつけ、幼虫二日目の蚕に食葉のクヌギの葉を与えてさと子は風呂につかった。湯が少し冷めていた。蚕も千頭を超えて、食葉を与えるのも時間が掛かるようになってきた。湯加減が変わって程よいぬくもりが戻ってきた。「修造さんです ... » more
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吹上随想#4 山繭
さと子は不思議な心持ちに囚われていた。一人山道を歩いているが、心細さも恐怖もない。オオカミも熊も出てきて構わない。どこかで必ず修造が見守っている。空襲に遭った時も、家族を失った時も、人生の重大な決断の時もこうした安堵感のもとに包 ... » more
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吹上随想#3 山繭
ほどなく修造が、山肌を二メートルほどの樫の棒一本で滑り下りて来た。スキーのステッキのように棒を操り、樹幹を抜け降りるのだ。マタギの山下りの技である。「ほれよ」修造がさと子の前に差し出したのは、水ぎぼうしの花だった。「えっ、こ ... » more
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吹上随想#2  山繭
「顔を見ないでくれ、俺は醜い」修造は左の顔を隠して、震えながら懇願した。さと子は手にした駕篭をかざして、修造に見せた。「天蚕を採ったのョ。やっと見つけたのです」「そんなものなら、この先の谷向こうに沢山いる」さと子は一年掛 ... » more
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吹上随想連載  刺繍の糸  19
最終章山法師の花終いかけの教室に吉田が入ってきた。「先生片付け、手伝います」吉田は後ろ手に引き戸の錠を掛けた。カチッという音に冴子は振り返った。「あら、吉田さん忘れ物でもされましたか」「そうじゃないよ冴子」冴子 ... » more
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吹上随想連載  刺繍の糸  18
生馬には遠い記憶がある。まだ一歳にならない頃の記憶だ。やはり記憶としか言いようがない。 更科耀子が妊娠に気づいたのは、夫忠則を亡くして過ぐる月日はさほど経っていなかった。突然の死であった。朝起きると耀子の隣で冷たくなっていた ... » more
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吹上随想連載  刺繍の糸  17
深夜電話が鳴った。冴子は声音を低く落として間をとった。「もしもしどなた」電話はプーと鳴って切れた。踏み込めば生馬の「俺は男だ。ばかもの」を云ってみたかった。冴子は可笑しくてひとり笑ったが、得てしてそんなものか知れない。 ... » more
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吹上随想連載  刺繍の糸  16
紫苑は脳血栓だった。後遺症が懸念された。右半身麻痺は避けられなかった。紫苑の右手は動かない。「此のざまよ・・・・」言葉に成らないもどかしさか、寝返りをうって左手で帰れ帰れをした。傍らに保子がいた。冴子に深くお辞儀をして ... » more
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吹上随想連載  刺繍の糸  15
第二章第二機動隊(方面機動隊・特別機動隊)更科生馬が全日本剣道選手権四年連続優勝を果たしたのは、二十八歳の時だった。郊外の庭のある平屋に越してきた。古民家の風情があり、ゆったり長い回廊が庭に面して四季の花を愛でることが出来 ... » more
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吹上随想連載  刺繍の糸  14
庭の和水仙三十株ほどが一斉に芽吹いた、小春日和の日だまりに一輪だけが花をつけている。その夜慶縣は早く帰って来た。「いつからだ。桜坂の父から実家に来い云うから寄って来た。」「あなたが初めてお連れになった日からです」「まだ、学 ... » more
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吹上随想連載   刺繍の糸  13
冴子は想い悩んで、義父紫苑を訪ねた。「はっはっはっ、そうか平手でぶったか」これまでの経緯を義父(ちち)にすべて話した。冴子は狼狽の色を隠せないでいる。「慶縣と別れたいと云う話しですね。冴子はいつかそれを口にするだろうと想っていま ... » more
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吹上随想連載  刺繍の糸  12
島原の外れに空き地が控えていて、小さな滑り台がひとつ置かれていた。遊具などと云うものが物珍しい時代、湯屋帰りの(雛妓)半玉三人が競って階段を登っては滑り降りていた。階段に詰まって並んでは笑い、登ってははしゃぎ、滑っては大きな声で笑 ... » more
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吹上随想連載   刺繍の糸  11
冴子の前髪を直して、生馬がささやいた。「おなか、すきませんか?」冴子は笑った。そういえば個展の準備に追われて、朝食を取ったきりだった。生馬の腕の中で恥ずかしさが沸騰してきた。顔を覗き込まれて気を失いそうになった。「はい、とても ... » more
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吹上随想連載  刺繍の糸  10
萼は大島の着流しに角帯をちょんがけして年中過ごした。寒くなれば、とんびを羽織って雪駄で何所へでも出掛けた。足袋は雪の中でも履かなかった。痛みを忘れたくなかった。裏山の日当たりに、コミヤマカタバミの白い花が久栄を想わせた。昨夜、風 ... » more
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吹上随想連載  刺繍の糸  9
冴子の父宗像萼が能面に惹かれたのは、終戦後だった。あまりにも多くの同朋を見送らねばならなかった。特攻作戦ほど日本的な滅びの思想は他にない。神霊筋怪士(すじあやかし)の面を彫りあげたのは、二十三の晩秋のことだった。面に対峙して気持ちに ... » more
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吹上随想連載   刺繍の糸  8
この夏、庭の紫式部の花を観たが、それから今日まで日常に追われてかまわなかった。既に紫の実を万朶に着けて、頭を垂れていた。夏より追われていたのは、糸染めだった。東山魁夷の刺繍の糸染めは骨が折れた。時に漆で染めた糸も縒ってみたが、 ... » more
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吹上随想連載  刺繍の糸  7
冴子は路傍に佇み、思わず笑みをこぼした。幼い頃に遊んだ夕化粧が夕暮れの道の端に咲いていた。そのころは、白粉花と母から教わった。たくさんの紅い花が懐かしい。花の萼を引き下ろし、紅い落下傘は意外に早く落ちた。子供の頃は、もっとゆっくり ... » more
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吹上随想  刺繍の糸  6
萩の花今年の夏は猛暑だった。盛夏、萩の枝は繁茂して広く枝を垂らした。冴子が、東山魁夷の「秋翳」に着手したのは、そんな季節だった。何日も画集を見つめ、色と縒りに創意を凝らした。縒りの手が止まることもあったが、質感を縒りに出したかっ ... » more
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吹上随想連載  刺繍の糸  5
今年も山梔子の花が咲いていた。冴子はこの花の猛しい芳香が、ちょっと苦手だった。金木犀の香も冴子には強すぎた。冴子の庭に、時折めじろが三羽、五羽と遊びに来た。刺繍の義父の庭にもいろいろな小鳥は飛んで来たが、こうした住宅地には珍しか ... » more
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吹上随想連載  刺繍の糸  4
生馬はこの女性と、前もこの桜坂で出逢ったことを思い出した。ああっ、あの着物の白足袋の裏、だと思い返した。冴子は、実家の門脇の潜り戸を開けて、生馬に会釈して入っていった。刺繍の父を度々訪ねては手ほどきを受けた。子供たちが小さい ... » more
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吹上随想連載   刺繍の糸  3
慶縣と義父の間には、長年の確執があった。江戸刺繍の家に生を受けた慶縣だが、刺繍の伝承も継承も興味がなかった。義父、紫苑が憂えたのは、江戸刺繍の継承者にはならないといった中学三年の夏のことではない。そんな者は弟子の中にごろごろとあ ... » more
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吹上随想連載   刺繍の糸 2
生馬は会釈した。生成の上布を着た女性だった。はなだ色したからむしの名護屋帯が涼しげだった。左腕に使い物の風呂敷を抱えて、黒柄小房の日傘を差していた。右の袂が下がって、白い二の腕があらわになった。生馬はその白に会釈してしま ... » more
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最終更新日: 2017/02/12 16:35

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